ニホンミツバチに呼ばれた話

その日は私のカフェの2階でホメオパシーの体験会が行われていた。

他にはお客さんもいないので1階奥の席でぼんやりしていると、「ぶーーん」と言う羽音が聴こえてきた。

いつも通り開け放ってある縁側から、久しぶりに蜜蜂が入り込んで来たみたいだ。

この春の梅が咲く頃から妻と二人で始めたカフェ「アミカフェ」は、糸島の観光名所「白糸の滝」へ向かう県道からちょっと外れた里山に佇む築70年程の古民家だ。敷地のすぐ横を川が流れていて、その向こうには豊かな水流を活かした田んぼが広がっている。

アミカフェ全景
アミカフェ全景

4月頃にも時々日本蜜蜂が室内に入って来ることがあって、最初は「花を探してるのかなー?」ぐらいに思っていた。

その後お客さんの紹介で日本蜜蜂の巣箱を置く場所を探している方と知り合い、大家さんとも相談して、カフェに近いくぬぎや栗などの雑木林に巣箱を置くことになった。

それまで私はニホンミツバチと西洋ミツバチの違いもあまり良く分かってなかったんだけど、カフェ営業の合間に巣箱の様子を見に行っては、花粉を付けたミツバチが巣箱に入って行くのを、二人で「可愛いねー」と観察したり、どんどん巣が大きくなるので何度も巣箱を追加したりと、蜂の先生から色々と教えて貰いながら、蜂のお世話をして来た。

9月2日には初めての採蜜も体験して 、採れたての蜂蜜の美味しさにびっくり!

その後、同じ糸島の芥屋で採れた蜂蜜や、福岡市油山産のものと食べ比べて、味の違いにまた驚いたり。

西洋ミツバチと違ってニホンミツバチはその地域にある色々な花の蜜を集める「百花蜜」だから、巣箱の周りの環境によってこんなに味が変わるんだね。

採蜜の様子
採蜜の様子

先日カフェに来てくれたお客さんに蜂蜜を味見して貰ってる時に、「そう言えばK野先生から『猿に巣を襲われたニホンミツバチが、助けを求めに来た。』って聞きましたよ。」と言う話が出て、「K野先生なら猿にも勝てると思ったのかも!」なんて言っていた。

だからその日、蜜蜂が近づいて来た時「もしかしてこれって?」と思ったのかもしれない。

でもまだ半信半疑な気持ちもあって、1回目はスルーして、「2回目また来たら。。」なんて様子を伺ってた。と言うか、最初に顔の近くまで寄って来た蜂を一旦よけながら、「本当に来て欲しいなら、もう1回寄って来て、『こっちに来て!』みたいな動きをしてよ。」とか考えてた。

そしたらまたすぐ近くまで飛んで来たんで、「やっぱりそうか!」と思ってそのまま見てると、縁側から外に飛んでった。まさに「こっちこっち!早く!」みたいな感じで。

「スズメバチだったら嫌だなー」とか思いながら、Tシャツ短パンに虫取り網と言う小学生みたいな格好で巣箱のあるくぬぎ林まで歩く。

入口に近い方の巣箱は特に異常なし。

奥の方の巣箱は?

あれ?

今なんか動いた!

巣箱の奥に一段低くなった場所があって、そっちの方の竹藪に茶色っぽくて小さな鳩ぐらいの鳥が数羽、がさがさと逃げていくところだった。

巣箱の周りを観察すると、すぐ横で蚊柱が立ったような感じで、数十~百匹位のミツバチがわやわや飛び回ってる。

しばらく辺りを歩き回って確認したけど、スズメバチはいなかった。

そのうち蜂たちも落ち着いて来たので、カフェに戻りながら「鳥がミツバチを襲ったりするのかなあ?」とか思った。

後で奥さんに「こんなことがあったよ。」と話すと、「へー、そうなんだあ!」と感心しきり。

ネットで調べたら、「スズメバチに襲われた時に人に助けを求めに来る。」とか「ひよどりが蜜蜂を補食することがある。」なんて情報があって、今回もやっぱりそうだったのかなー、なんて思った。

奥さんは「でも、蜂は何でここにあなたがいるって分かったの?」と言う。確かにそれももっともな疑問かもしれない。

でも、私はこう思う。

実は私たちが今カフェとして使っている家には、去年の夏まで農家さんが住んでいた。その人は有機農業をやっていて、敷地内に日本蜜蜂の巣箱を置いていたらしい。

だからきっと、今年の春に飛んで来ていた蜜蜂たちは、何度もこう言っていたのだ。

「ねえねえ、今年は巣箱置いてくれないの?」

だから私たちがたまたま巣箱を置いたら、2日後にはすぐ蜜蜂が入ったんだ。

私は最初、この前初めて蜂に呼ばれた、と思っていたけれど、本当はそうじゃない。

半年前から、いや、ひょっとするともっともっと前から、蜂たちに呼ばれていたんだ。

日本蜜蜂の巣箱
日本蜜蜂の巣箱